F#メカニズム
2023.10.26
リペアの小窓
Ⅳ F#メカニズム
皆さんは「F#メカ」をご存知でしょうか?
あまり一般的ではないのでご存じない方も多いのではないでしょうか?
高音のF#が出しづらいのでよく中指を使って吹きますね。それでも他の音に比べると鳴らしづらく困ることがあります。
ヴェーム式フルートの発明者、テオバルト・ヴェームは「このフルートは不完全な音が二つある」と言っています。一つは高音のE、そしてもう一つはこのF#です。歌口側から見て、「二つの音孔が並んで空くと音は出しづらい」と言うのです。確かにこの二つの音だけはこの状態になっています。
そこでヴェームは高音のEはオープンG#で解決しました。つまり高音のEはG#キィを小指で押さえ、閉じることで二つ並んで空く音孔を一つにしたのです。ですからEメカに頼らずE音は楽にきれいに吹くことができるのです。しかし、もう一つのF#はそのままになってしまいました。
そこで後年考えられたのが「F#メカ」です。これは左手中指で操作する二つの音孔の片方(B♭ではないAの音孔)を閉じるメカニズムです。普通、左手中指で操作すると同時に閉じてしまいますのでこのメカではAキィを二層にし、右手薬指でのF#の運指の時、Aの音孔のみを閉じるというものです。
右手F#キィからブリッジを通して左手側に連結します。
Aキィは二つに分け、音孔はカヴァードのカップで塞ぎ、ブリッジを通して右手に連結します。
中央部で連結する構造で、右手のF#を押すと左手のAのカップのみが閉じることになります。
これによってF#も他の音と同じレベルで吹くことができます。